レンガ造りの町並みと近代的な金融街が隣り合い、活気を生み出しているホワイト・チャペル地区。
大英博物館をはじめ、世界有数の美術館・博物館を擁する街、ロンドン。その多くが入場無料なのは、国の政策として、博物館・美術館の開放が国民の福利厚生の向上につながるという考えに基づいているからだとか。誰もが気軽にアートに触れられる環境が整うロンドンには、質・量ともに最先端と最高峰のアートが集結しています。このように恵まれたアート環境が整うロンドンにあって、最も旬なギャラリーが軒を連ね、アートファンからの熱い注目を集めているのが、ホワイトチャペル地区です。
ホワイト・チャペルの地名の元となったセイント・ジョージ教会。
ロンドン・メトロポリタン大学のアートスクールと学生組合の本部や、英国の近現代美術を牽引し続ける代表的な公営アートギャラリーである「ホワイト・チャペルギャラリー」が居を構えるこの地区は、街行く人々が纏う雰囲気もどこかアーティスティック。大通り沿いの壁やショップのシャッターをキャンバスに、いたるところにハイレベルなストリートアートが描かれ、アートムードを盛り上げます。
個性的なブティックが立ち並ぶショッピング街としても人気が高まっている。
ストリートアートが景観になじんでいるのもホワイト・チャペル地区ならではの光景。
レイデン・ギャラリーの外観。
個展会場となったレイデン・ギャラリーは、2013年にオープンした比較的新しいギャラリーですが、人通りの多いレイデン通りの角に位置する立地の良さと併設されたバーの効果で、常に人が入れ替わり立ち替わりやって来る人気のスポット。オーナーを務めるリンジー氏とパートナーのアドレアナ氏がキュレーションする展覧会やパーティー、ライブなどさまざまなイベントが催されています。リンジー氏自身がコメディアン、ミュージシャン、俳優として活動するアーティストのため、ギャラリーはリンジー氏の交友関係をはじめとするアート業界人にとってハブのような場所にもなっています。
雰囲気のあるレンガ造りの佇まいが目を引くレイデン・ギャラリーのビル。
バーカウンターでは、なじみの客同士が挨拶を交わし合う。
アットホームな雰囲気もレイデン・ギャラリーの大きな魅力のひとつ。
レイデン・ギャラリーのオーナーを務めるリンジー氏(右)とアドレアナ氏(左)。2人の人柄に魅かれてギャラリーを訪れる人も多い。
大好評を博した美人画がモチーフの押絵展。プライベートビューは、大勢の招待客でギャラリーが満員御礼に。
そんなロンドンのアート界を牽引するレイデン・ギャラリーにおいて、当法人が世界各国で展開を続けている日本文化発信事業、JAPAN TIDE(ジャパンタイド)の一環として開催された日本人アーティストによるロンドン個展。2018年は5月29日(火)~6月16日(土)の春会期と、10月2日(火)~13日(金)の秋会期で、6名のアーティストの個展を開催しました。イギリスでは、2017年に大英博物館で開催された葛飾北斎展「Hokusai beyond the Great Wave」以来、浮世絵や伝統工芸品、さらには日本的なデザインを含むジャパン・アートへの注目が非常に高まっており、ジャポニズムブームに沸いています。
とくに秋会期では、美人画がモチーフの告知フライヤーを事前配布したところ、人気のあまり早々に品切れとなる事態に。展示初日から予想を大きく上回る来場者でギャラリーが埋め尽くされ、ジャポニズムブームを裏付ける大盛況となりました。
ロンドン中の多数のギャラリー、文化施設、日本食レストランやバーにフライヤーを設置し、大々的にPRを展開。
会期初日は、大勢の人々が詰めかけることが多い。
書の展示は日本好きにとくに人気が高い。
来場者を温かく出迎えるリンジー氏。
バーでは、おもてなしのスパークリング日本酒がふるまわれた。
来場者の内訳をみると、フライヤーを手に“日本人作家の個展”と聞きつけてやって来た人が多く、今のロンドンでは“ジャパン・アート”が旬のジャンルであり、アートファンに限らず誰もが高い関心を寄せていることがうかがえました。特に日本的な情緒のある作品-たとえば書や水墨画、着物といった和のモチーフ-が好まれ、また、在廊する作家に積極的に質問をしたり、じっくりと展示パネルを読み込むなど、より深く作家の世界観を理解しようとする、アートに対して熱心な来場者が多い点もロンドンの特長と言えるでしょう。
会場には英国王立芸術協会前会長のジェームス・ホートン氏らVIPも訪れた。
アンケートへもぎっしりと書き込みをしてくれる来場者が多いこともロンドンの特長。
「作品に描かれた羽根の美しいこと! 構成にもこだわりが感じられます」
「紙と墨が織りなす芸術作品、陽気で力強いエネルギーを感じました」
「私の“いつか行ってみたい日本”がキャンバスいっぱいに広がっていました」
「大変美しいです。繊細でとても愛らしく、見る者を魔法の世界へ連れて行ってくれるような気がしました」
「さまざまな生地を組み合わせて作られた人形の衣装が素晴らしい! 立体感や布の彩り、全体と調和した和紙の背景も素敵です」
作品を購入してご満悦な男性。
「怒り、恐怖、嫉妬、恥じらいなど、あらゆる場面が人形の表情に生き生きと描写されていて素晴らしかった」
「日本人の展示はロンドンでは大変珍しいです。偶然にもこの展示会に出会えてとても嬉しいです」
「明るくて華やかな上に、日本文化が力強く描かれていると思いました。日本人形が素敵でかわいらしいですね!」
「とてもうまく描かれていて、遊び心が満載なところが非常に気に入りました。たくさんのストーリーが秘められているように感じました」
「すべての作品に物語があり、伝統と豊かな想像力から生まれた世界が楽しめました。美しくて素敵な日本の方の作品に出会えてよかったです」
日没後もギャラリーは賑わいが続き、アート談義に花が咲いた。
イギリスは、ヨーロッパでフランスに次いで国民1人あたりの文化予算が高い国(※1)であり、日本の約3.5倍、アメリカの6倍にも及ぶ高いポテンシャルを持っています。イギリス国内の美術館、博物館の多くが無料で開放されているのにも関わらず、この数値となるのは、アートマーケットが成熟し、有料の美術館へも日常的に行くようなライフスタイルが広く定着しているからではないでしょうか。良いものを長く丁寧に使う価値観が根付くイギリスは、繊細な技術やオリエンタルな魅力を持つジャパン・アートともともと親和性が高い場所であり、さらにジャポニズムブームの追い風も相まって、新しい才能と作品が待ち望まれています。当法人は今後も個展やグループ展を積極的に行い、さらなる日本文化の発信と優れたジャパン・アーティストのプロモーションに力を注いでまいります。
※1 平成29年度文化庁委託事業「諸外国における文化政策等の比較調査研究」より
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