中央、オランド大統領が来場(2015年当時)
リーヴル・パリ(Livre Paris)は、毎年3月下旬にフランスで開催される世界屈指のブックフェア。
かつては「サロン・デュ・リーヴル」の名で親しまれ、2016年に現在の名称にリニューアルされたものです。
1981年以降、パリ南西端に位置するポルト・ドゥ・ヴェルサイユ展示会場において18~20万人の来場者数を記録しています。
世界50ヶ国から実に3万人の出版関係者が集い、4万平米もの規模で展開されるこのフランス最大のブックフェアは、国中のマスメディアが最も注目する書籍見本市のひとつとなっています。
その影響力は、「今年のポスターデザインが決まった」というだけでニュースが報じられるほど。アート&デザインの聖地・フランスならではの関心度の高さが見受けられます。
2017年度のポスターデザインが決定
フランスでは、政界・財界・芸能界・スポーツ界など、第一線で活躍する人々の多くが積極的に本を執筆し、文学界のみならず出版活動が非常に盛んに行われています。
それだけに、リーヴル・パリほどの規模のブックフェアともなればプロモーション効果は絶大。ベストセラー作家、映画俳優、アーティスト、文化人、政治家やスポーツ選手などがあちこちの出版社ブースで新刊を発表しており、多数のメディアが取材に詰めかけます。
こうした華やかな顔ぶれに出会えるのも、ここリーヴル・パリを訪れる大きな醍醐味。
オープニングパーティーではシャンパンが振舞われ、サイン会、対談、討論会やシンポジウムほか、来場者参加型の交流イベントが毎日催されるなど、読書好きにとってはもちろんのこと、あらゆるファン層に嬉しい数日間となります。
フランスのベストセラー作家 マキシム・シャタム(左から2番目)
作家トークショーも人気を博す
ワークショップも満場
漫画家によるデモンストレーション
フランスの「今」を肌で感じられる知のスポットとしても、一見の価値があります。
フランス政府も公式ブースを構え、大統領や文部科学大臣も毎年来場するなど、国民との密な交流の機会ともなっています。
政府ブースでは、フランス本土だけでなく「海外県」「海外領土」であるグアドプール、ポリネシア、ニューカレドニア(特別共同体)など、ヨーロッパ圏外の多様なフランス文化の情報も発信されています。
また、斬新なデモンストレーションや工夫の凝らされた販促手法など、出版・メディアを軸にあらゆる業界・ビジネスを巻き込む勢いのなかで、多彩なインスピレーションを得ることができます。
中央、ベルナール・カズヌーヴ内務大臣(2015年当時)
伝統的な木版印刷機を用いた実演に興味津々
思わず手に取りたくなるハイレベルなポップアップ絵本
リーヴル・パリでは、毎年「招待国」が設定され、国際的な文化交流も大きな特徴となっています。
日本が招待国となった2012年には、東日本大震災1周年を迎えた節目の年ということもあってか、開催史上初めて来場者が20万人を超えました。
これまでに、ノーベル賞作家の大江健三郎をはじめ、小説家の島田雅彦、江國香織、俳人の黛まどか、漫画家の萩尾望都など、日本を代表する作家が多数参加していることでも広く知られています。
日本人作家のフランス語版詩集やエッセイへの関心も高い
本年2017年度は、3月24日(金)~27日(月)の4日間の開催です。
招待国は、モロッコと北アフリカ。交流イベントでは、近年深刻なイスラム文化と国際社会との関わりなど、世界的にも興味深いテーマが設けられています。
フランス大統領選を5月に控え、新刊アピールを兼ねた立候補者たちがリーヴル・パリ参加を表明していることもあり、例年にも増して注目度が高まるとみられています。
2017年、ジャパンプロモーションからは、2名の日本人アーティストが出展します。
海外向けの短歌入門書を発表する女性歌人は、次のように意気込みを語っています。「フランスには詩を愛する精神文化があります。短歌とは日本伝統の短詩文学。日本ならではのことばの美を感じていただけたら」。
もう一方は、フランスの三大美術雑誌のひとつ『UNIVERS DES ARTS(ユニベール・デ・ザール)』で別冊特集が組まれた油彩画家。秋にパリの有名美術館での個展開催が決定しており、大々的にプレゼンテーションを行います。
リーヴル・パリというステージは、海外進出に向けたメディア戦略においても、今までにない新たな展開を予感させます。